| アメリカのアーバン・ミュージック業界を傍から見ていると、彼らのなかではまるでワーカホリックであることが美徳とされているような、そんな印象を受ける。まさにワーカホリックとの理由でGQ誌の〈Men
of the Year〉に選出されたリル・ウェインは、言わばそのシンボルといったところか。そういえば、ハリウッドにあるウィル・アイ・アム(ブラック・アイド・ピーズ)邸を訪問したとき、彼は取材と取材の合間に5分でも時間が空くとビート作りに勤しんでいた。
DJ SOULJAHは、そんな環境のなかで育まれた男だ。
「最初にレコードのバイイングや買い付けをやって、そのあとでレコードを作る側、レコード会社やディストリビューターと仕事をして……そうしているなかで物を作る流れがわかってきました。曲がどうやって発生するのか、とか。それをさかのぼっていくと、今度はスタジオに行き着いてアーティストがいて、みたいな。僕は買い手から始まって作り手にいくって道を通ってきてるから、自分で完パケまで作れちゃうんですよね。業界の仕組みというか、そういう知識を得られたのは大きかったです。インディ音源を作るのに、誰かを介する必要がないんですから」
1999年に単身ニューヨークに渡り、さまざまな意匠を凝らしたコンセプチュアルなミックステープ/DVDを足掛かりに名を馳せていったDJ
SOULJAHの足跡については、別掲のプロフィールだったり、www.primecuts.jpで読めるインタビュー記事を参照してほしい。そこに記されているとおり、現在彼はバッド・ボーイやデフ・ジャム、ワーナー・ブラザーズ、ソニー/コロンビアといった大手レーベルから直々にミックスDVDの製作を依頼されているわけだが、多くを語らずとも、その一点のシンプルな事実がいろいろなことを証明してくれると思う。スキル、クオリティ、そしてストリート・クレディビリティ。ちなみに、www.djsouljah.comに掲載されているDJ
SOULJAHの英文バイオグラフィを執筆し、彼に〈true Souljah in the game〉と賛辞を捧げているのは、名著『Ego
Trip's Book of Rap Lists』やリアリティ番組『The (White) Rapper
Show』などを手掛けた人気ジャーナリストのチェアマン・マオ氏。現地でのDJ SOULJAHのステイタスは、こんなところからもうかがい知れるだろう。
「2008年までの3年ぐらいは本当にみっちりやってました。昼間は制作、夜はクラブ、という感じで。ずっと走りっぱなしっていうか、こっちの業界のワーカホリックなひとたちのノリに近いものがありましたね。力んでいただけなのかもしれないけど、そういうやり方しかわからなかった。もう、一回一回力を使い切っていたから大変でしたね」
いまは走り込むところと休むところをきっちりわけるようにしてる、とのことだが、現在でも年間20タイトルを超えるCD/DVDをリリースしているし、それと並行してクラブやラジオでのDJプレイ、さらには楽曲制作も行なっているのだから、以前がどれだけハードだったかは簡単に想像できる。そして、そんなDJ
SOULJAHの歩みのひとつのシンボルといえるのが、先述した自身のウェブサイトだ。彼は「必要なものはだいたい盛り込んだつもり」とさらりと言ってのけるけれど、ひとりのDJが運営するメディアとして、この完成度はちょっとすさまじい。単なるプロモーション媒体や通販サイトを超えたエンターテインメント性の高いコンテンツ(ここでは最新のニュースから日本のメディアではなかなかお目にかかれない貴重なインタビューや動画、現地のトップDJによるミックス・ショウまでもが楽しめる)からは、彼のトータル・プロデューサーとしての才覚を垣間見ることができるはずだ。
「総合職みたいなのが好きなのかもしれないですね。あと、なにをやるにしても小さいところから始めればいいんですけど、性格的にどうしても高いところにハードルを設けてしまう(笑)。なんか追いかけてないとダメなんですよね。動いてないと落ち着かないというか。作品にしてもただ乱発するだけじゃなくて、意味のあるものを出していきたいです。ひとつひとつちゃんとコンセプトを決めてやっていけば、確実に結果は残せると思う。いままでも決して大きくは上がっていないけど、ずっと上向きにはきていますから」
これがDJを賞賛する言葉としてふさわしいものかどうかはわからないが、DJ SOULJAHは本当に〈ちゃんとしている〉。本来であれば、現地でも定評のあるスクラッチ・テクニックやミックス・センスだったり、バイヤー経験で培われた豊富な音楽知識を讃えるべきなのだろうけれど、彼の勤勉で生真面目で丁寧な姿勢もまた、それらと同じぐらい評価に値すると思うのだ。将来的にはオリジナル・アルバムの制作も視野に入れているというプロデューサー・ユニット、CUT
CREATOR$としての活動が日々活発化してきていることを考えると、今後は国内でもDJ SOULJAHの仕事に触れる機会が増えてくると思うが、彼のパッションとアティテュードは日本の音楽業界にもたくさんの刺激と示唆を与えてくれるにちがいない。
「前はニューヨークに固執していたんですけど、いまは自分のキャパシティを狭めるようなことはしたなくないですね。なるべくフィールドは広くしておきたいと思ってます」
クラブ・プレイ一筋、という職人気質のDJに強く惹かれる。でも、DJという職業の可能性をとことんまで追求していくオールラウンダーもとても魅力的だ。はたして、DJ
SOULJAHは我々にどんな景色を見せてくれるだろう。
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